楓盆栽の育て方、手入れ、管理など

<楓盆栽の特徴>

カエデ盆栽-maple-bonsai-tree-001.JPGかえで,楓,カエデ
(英名:maple,acer,trident maple) 

カエデ科カエデ属のうち盆栽では、切れ込みが3裂で浅いものをカエデ、切れ込みが5裂以上で深いものをモミジといっています。

カエデの代表種としては人気の高いトウカエデ(唐かえで)と、その変種のミヤサマカエデ(宮様かえで)があげられます。

いずれも紅葉の美しさが最大の特徴ですが、まばゆい緑も捨てがたい魅力があります。さほど枝づくりの難しさもなく、持ち込むほどに樹格が上がるところが、盆栽の中でもひときわ高い人気樹種になっているゆえんでしょう。

毎年の芽摘みや葉刈りで細かく枝先をつくっていくと、新緑、紅葉後の寒樹の風情も楽しめます。

なお、トウカエデよりミヤサマカエデの方が幹の太りがよく、特に立ち上がりが立派になります。

 <楓盆栽 管理>

 【水遣り】

根の生育がおう盛なので水切れに注意し、表土が乾いたところでたっぷり水やり。

いったん水切れした葉はきれいに紅葉しません。

また、根が張ってくると水がしみこみにくいので、いったん水が引いてから再び与えるようにして吸い込ませます。

【肥料】

芽摘み、葉刈りの後は新芽が伸びてから、必要に応じて月一回水やりの代わりの液肥で窒素分を補います。

【植え替え】

毎年三月に太根、長根を短く切り、良く根を刈り込んでから、基本用土で植え替えます。

細根をいかにたくさんつくるかが、細かい枝ぶりにつながります。

そのためにも用土んもしっかりふるい分け、粒のそろったものを使います。

【病害虫】

ゴマダラカミキリはあっという間に葉や枝を食い荒らします。見つけしだい薬剤駆除。

食害された葉は葉刈りで再生させます。

カイガラムシは冬の間に冬期用の殺虫剤、殺菌剤を散布しておきます。

【冬越し】

寒さには強く、関東以西は屋外で冬越しできます。

土が凍るような場合は室内に取り込むか、寒冷紗で覆います。

<楓盆栽 手入れのコツ>

【芽摘み】

四月に入ったら3節伸びたところで、1節を残して指かピンセットを使って摘み取ります。

楓の芽摘みは、盆栽の芽摘み作業としては早めに行う方です。

何もしないと外側の大きな葉と内側の小さな葉が、まばらにつくようになってしまいます。

芽摘みは生長を均一化するのに欠かせない作業ですから、樹勢の強いところは1節残し、弱いところは2節残して調整します。

カエデは秋にも芽摘みを行います。


【葉刈り】

六月、きちんと芽摘みした樹は、大きさのそろった葉が密生してみごとな新緑を見せているはずです。

しかし、こうなると風通しが悪くなったり、日当たりが悪くなって内部の葉が弱りだします。

そこで、せっかくそろえた葉ですが、いったんすべて刈り取ってしまいます(全葉刈り)。

葉柄をほんの少し残す気持ちで、剪定バサミでどんどん刈っていきます。

人工的な落葉状態にするわけです。小さな葉が多少残るぐらいの丸坊主にすると、内側にも光線が入って生長が促されます。

やがて2番芽がいっせいに開くと、若々しい葉になって大きさもそろいます。

これが紅葉させる葉です。

なお、完成木に近づいてきたら均一に刈らず、生長の早い必要な部分だけ行い、全体のバランスをとるように心がけます。

あとは再び春と同じ要領で芽摘みをします。

さらにその後も伸びてくる芽は摘みましょう。芽摘みと葉刈りを繰り返すことで小枝が増え、胴吹き芽も出てくるようになります。

芽摘みと葉刈りは1年で2度の新芽、つまり2年分の枝が伸ばせるのが最大のメリットです。1年で2年分の枝数ができることにもなります。

作業後は木がダメージを受けているので、明るい日陰に移し、水やりも少し控えめにします。

【剪定】

葉刈りの前には、徒長枝や不要枝をあらかじめ切って起きます。

落葉後の休眠期も徒長枝を1~2節残して切り詰める事ができます。

葉がないので腋枝や車枝が見つけやすくなるこの時期は、こまめに不要枝を剪定するチャンスです。

【針金かけ】

葉刈りを終えると枝振りがよくわかるので、針金をかけて樹姿を整えます。

方向の悪い枝は、それぞれの枝先に向けて矯正するようにします。 

【繁殖】

春挿し、梅雨挿しができ、新枝だけてなく古枝も小指くらいの太さまでなら使えます。

挿し穂はある程度剪定して骨格を作っておくと、その後うまく形ができます。

実生苗は軸切りの挿し芽をすると、太くしまった苗になり、根もしっかり張ります。

実生をするには、花つきと実止まりがよく、節間が詰まり、葉の小さな木を見つけておき、その種子を手に入れることです。

10~11月に羽根を取って取りまきしたら五月頃発芽するので、約1年育ててから春の芽吹き前の三月に直根を切って植え付けます。

何年か持ち込んでは植え付け角度を変えたり、強く剪定したりして骨格を作ります。

よい胴吹き芽が出てきたら、生かす方向で作り変えていきます。

自生種のないミヤサマカエデは、実生でしか増やせません。

実生苗や挿し木苗などはまとめて寄せ植えにできます。

生長のよいものを主木にし、ほかはやや低くなるように剪定します。

手っ取り早く仕上げたいときは取り木も可能です。 

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 <楓盆栽 月毎の手入れ>

【一月】

枝先を整える程度の剪定が可能です。作業後はムロで保護しましょう。

【二月】

2月下旬~3月になり、芽が動く直前は植え替え最適期です。

【三月】

植え替え適期は三月上旬頃までです。四月以降は芽摘みをして節間の間延びを防ぎます。

【四月】

新芽が伸び出したら芽摘みと並行して葉刈りを行う。葉刈り後の不定芽の処理も忘れずに。

【五月】

枝骨をつくるために走らせていた新枝は堅くなる前に芽押さえしましょう。風通しの良い環境下での管理が最適です。

【六月】

葉刈りと葉透かしが可能です。灌水時には葉やけに留意し、葉水等を行いましょう。

【七月】

七月上旬頃まで葉刈りが可能です。二番芽の整理も行いましょう。

【八月】

九月に入れば肥培を開始します。殺菌・消毒を定期的に行いましょう。

【九月】

夏までの葉刈りの効果で、全体の葉の大きさがそろう頃です。養成樹は肥培管理の徹底を。

【十月】

枝作り段階であれば十月中旬頃まで肥培し、落葉前に全葉刈りと小枝の剪定を行いましょう。

十一月】

落葉前後の時期は枝先の軽い剪定程度なら可能です。小枝のほぐれた古木は寒さが本格化する前に保護を。

【十二月】

幹洗いと冬期消毒の後に保護室に入れます。特に鑑賞段階の樹や小品は早めの保護を。

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